
DX化によって社内の業務プロセスやシステム構造などを変革することで、大幅な業務効率化を実現できます。しかし、DX推進の知見やノウハウは十分に浸透しているとは言えず、企業担当者のなかには「DXによる業務効率化を実現したいが、進め方やポイントなどがわからない」という方も多いのではないでしょうか。
本記事では、DX化の概要やIT化との違い、DXによる業務効率化の進め方および成功ポイント、業務効率化の成功事例などについて解説します。

DX化とは?
そもそもDXとは「Digital Transformation」(デジタルトランスフォーメーション)の略であり、DX化はデータ・デジタルの力を活用して社会やビジネスを変革していく活動全般を指します。
IPAの「DX白書2023」によると、DX化に取り組んでいる国内企業の割合は、大企業で4割強、中小企業で1割強にとどまっています。また、産業別で見ると「情報通信業」や「金融業、保険業」が約5割と比較的高いものの、全産業平均では2割強です。
このことから、DXの推進は、国全体・各企業のいずれにおいても重要な課題であると言えるでしょう。
IT化との違い
DX化と混同されやすい言葉として「IT化」があります。IT化とは、ITを使って既存業務の効率化・改善を目指す取り組みです。
DX化は社会やビジネスの変革を目指すのに対し、IT化は業務の効率化・改善を目指すため、両者は取り組みの視点において大きな違いがあります。DX化はいわば最終的な目標であり、IT化という「手段」を通じて社会・ビジネスの変革を実現していく大きな取り組みです。
日本企業でDX推進が求められる背景
それでは、なぜ日本企業でDX推進が必要とされているのでしょうか。DX推進が求められる主な背景には、「2025年の崖」問題やコロナ禍の影響によるデジタル移行の緊急化が挙げられます。
経済産業省は「2025年の崖」問題として、既存システムの複雑化・ブラックボックス化を解消して2025年までにDX化を実現できない場合、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性を指摘しています。
加えて、多くの企業がコロナ禍の影響により出社を前提としない働き方への急速な対応に迫られ、業務のデジタル移行などのDX推進が急務となっています。
DXの推進で業務効率化につながる理由
DXの推進は、国全体として社会を変革する大きな取り組みです。同時に、各企業にとっても業務効率化などのメリットがあります。
ここでは、DXの推進により業務効率化につながる主な理由として、以下の4点を解説します。
- コストを削減できる
- 生産性を向上できる
- データ管理の最適化ができる
- レガシーシステムから脱却できる
コストを削減できる
まず、DX推進によってコスト削減が可能です。
経済産業省のDXレポートによると、既存システムを使った現行ビジネスの維持・運営に9割以上もの予算を割いている企業が約4割存在しています。DX推進によって既存システムの刷新や現行ビジネスの運営方法の見直しを行うことで、予算の多くを費やしている現行ビジネスの維持・運営の効率化が可能です。
生産性を向上できる
DX推進により、生産性の向上も期待できます。
DXでは、ビジネスを抜本的に変革するためにゼロベースで現状業務の棚卸しやプロセス見直しなどを実施します。そのため、これまで非効率であった業務プロセスを大幅に改善し、生産性の向上を実現することも可能です。
データ管理の最適化ができる
DX推進によって、データ管理の最適化にもつながります。
DX推進の取り組みの中で、アナログデータのデジタルデータ化なども行っていくことになります。これまで社内に散在していた紙の資料などをデジタルデータ化し、デジタル上で一元管理することで、情報を探す時間の大幅な短縮化を図れるでしょう。
レガシーシステムから脱却できる
DX推進によってレガシーシステムからの脱却も可能です。
レガシーシステムは、老朽化・複雑化・ブラックボックス化した古いシステムのことであり、レガシーシステムを保有し続けることで、IT人材不足や保守・運用コストの増加を招きます。経済産業省はDXレポートの中で、レガシーシステムの保守・運用に貴重なIT人材資源を浪費している問題を指摘しています。
DX化によってレガシーシステムを刷新することで、レガシーシステムの保守・運用にかかるIT人材の工数を削減し、業務効率化を実現できるでしょう。
DXによる業務効率化の進め方
ここでは、DXによる業務効率化の進め方について、以下の手順に沿って解説します。
- 課題をヒアリング・洗い出しする
- 課題解決の方法を決定する
- 課題解決に向けた計画を立てる
- 計画どおりに施策を実行する
- 効果測定・計画の見直しをする
DXによる業務効率化を進めていくためには、計画・実行・検証・改善のPDCAサイクルを継続的に回していくことが大切です。
➀課題をヒアリング・洗い出しする
まずは課題のヒアリング・洗い出しを行います。業務効率化を実現するためには、現行の業務課題をしっかりと理解することが必要です。業務の責任者や担当者を集めて、業務課題のヒアリングを行いましょう。
ここでポイントとなるのは、業務をよく知る業務現場のキーマンを巻き込んで、業務課題を十分に吸い上げることです。また、ヒアリングした業務課題がなぜ生じているのか、背景にある要因を合わせて聞き出す必要もあります。
➁課題解決の方法を決定する
課題のヒアリング・洗い出しができたら、課題の解決方法を策定します。課題の解決方法にはさまざまなアプローチがあるため、まずは実際に行うかどうかに関わらず、幅広く解決策を検討することが重要です。
検討した解決策に対して、効果や実現性、コストなどの観点で評価し、実行する施策を決定していきましょう。
③課題解決に向けた計画を立てる
課題の解決方法が決まったら、計画を立案します。計画を立てるうえでは、課題解決までのスケジュールや必要な体制、コストなどさまざまな要素を洗い出すことが大切です。
立案したスケジュールや体制、コストについては、責任者の承認を得るとともに、関係者へしっかりと展開していきましょう。
④計画どおりに施策を実行する
計画の承認・展開を行った後は、施策を実行していきます。施策を実行する際は、スケジュールやコストなどにおいて計画と実績の乖離がないかを定期的に確認していくことが重要です。
また、実際に施策を行っていく中で、計画時に見えていなかった課題や改善ポイントが出てくる可能性もあるため、忘れずに記録していきましょう。
⑤効果測定・計画の見直しをする
施策の実行後は、効果測定・計画の見直しに入ります。施策は実行して終わりではなく、実際に効果があったかどうか検証することが大事なポイントです。検証の結果、十分な効果が得られなかった場合は、次のアクションに向けて計画の見直しを行っていきましょう。
また、施策実行時に判明した課題や改善ポイントなどについても、計画を見直す際に反映していくことが大切です。
DXによる業務効率化を成功させるポイント
DXによる業務効率化を成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- DX人材の育成を進める
- DX化の目的を明確にする
- 自社に合ったツールを選定する
- 社員へのフォローを手厚くする
- 短期目標と長期目標を立てる
自社のDX化の目的を明確化したうえで、長期的な目標および短期的な目標に向けて会社全体で協力していくことが求められます。
DX人材の育成を進める
DXによる業務効率化を成功させるためには、しっかりとDX人材を育成することが不可欠です。企業活動の原動力は「ヒト」であり、DX化の成否においてもDX人材の育成がカギといっても過言ではありません。
DX人材の育成を進める際には、経済産業省の「デジタルスキル標準」などが参考になります。経済産業省が定義する以下のDX人材類型などに基づき、社内のDX人材育成を進めていきましょう。
- ビジネスアーキテクト
- デザイナー
- データサイエンティスト
- ソフトウェアエンジニア
- サイバーセキュリティ
DX化の目的を明確にする
DX人材育成と同様に重要となるのが、DX化の目的を明確にすることです。
DXによる業務効率化を成功させるためには、「なぜ自社でDX化を行うのか?」の目的をはっきりさせる必要があります。自社のDX化の目的が明確であれば、全社員が同じ方向を見ながら円滑にDX推進を実施していくことが可能です。DX化の目的を明確にし、社内でしっかりと周知・共有していきましょう。
自社に合ったツールを選定する
DX推進を行う際には、手段として各種ITツールを活用するケースが多くなります。ITツールにはさまざまなものがあるため、自社に合ったツールを選定することが大切です。自社のDX化の目的に見合うITツールをいくつか選定し、機能や特徴、コストなどの観点で比較・評価を行うようにしましょう。
また、ツールに対する問い合わせ対応や運用サポートの手厚さも重視すべきポイントです。
社員へのフォローを手厚くする
DX化は、これまでの業務プロセスやシステム構造を大きく変革する取り組みです。そのため、変革の前後において社内で混乱が生じることも考えられます。
社内の混乱を防ぐためには、社員へのフォローを手厚くすることが重要です。各部署の責任者などから、現場の各メンバーへDX化の目的やメリット、業務の変化点などを丁寧に説明し、社内全体で共通認識を図っていきましょう。
短期目標と長期目標を立てる
DX推進は、ビジネスの抜本的な変革に向けて、長い期間をかけて取り組む活動になります。したがって、短期目標と長期目標をそれぞれ立てて、DX推進の進捗状況を把握できるようにすることがポイントです。
たとえば、最終的な長期目標を四半期ごとに細分化し、短期目標として設定することで、DX推進の成果や課題をこまめに確認できるでしょう。
アナログデータのデジタル化などの局所的な改善であっても、短期目標の一部として評価していくことで、社内のモチベーション維持・向上につながります。
DXによる企業の業務効率化の成功事例
DXによる業務効率化の取り組みは、業界や業種に関わらず実施されています。
ここでは、経済産業省が発表している中堅・中小企業等のDX優良事例選定「DXセレクション2023」で取り上げられている事例として、以下3社の事例を紹介します。
- 株式会社フジワラテクノアート(製造業)
- グランド印刷株式会社(印刷業)
- 有限会社ゼムケンサービス(建設業)
株式会社フジワラテクノアート(製造業)
株式会社フジワラテクノアートは、岡山県にある醤油・味噌・日本酒・焼酎などの醸造食品を製造する機械・プラントメーカーです。同社がDX推進を始めた目的・経緯は、「醸造を原点に、世界で『微生物インダストリー』を共創する企業」という会社ビジョンを達成するためです。
目的である上記ビジョンの達成に向けて、以下のようなDX推進の取り組みを実践してきました。
- DXが各社員にとって「自分事」となるよう、各社員にDXの必要性を複数回にわたって説明
- 自社主導でのシステム導入や社員の自発的なデジタルスキル向上など、デジタル人材増加の好循環を醸成
- 主要協力会社との取引のオンライン化、および協力会社を巻き込んだ情報セキュリティ対策の推進
DX推進の結果、同社は業務プロセスの効率化や事務作業ミスの削減、メンテナンス用部品の納期短縮、デジタル人材の育成などのさまざまな成果を挙げています。
この事例から、DXが各社員にとって「自分事」となるまで何度でもビジョンや目的を説明・共有し、会社全体で共通認識を図っていく重要性が学べるでしょう。
グランド印刷株式会社(印刷業)
グランド印刷株式会社は、福岡県にあるシルクスクリーン印刷・デジタルプリントを主体とした印刷会社です。同社は、社内の各事業をデジタルによって連携・統合し、共通の理念や価値観でつながる「連邦多角化経営」を目指し、DX推進を取り組んできました。
同社の主なDX推進の取り組みは、以下の通りです。
- システムの管理・運用体制の強化、およびサーバー情報の日次バックアップ取得
- 社内情報のデジタル上での一元管理・共有により、業務の属人化を解消し、社員の有休促進などを実現
- 自ら問題を見つけ改善案の指示を出せる人材を「DXプロデューサー」と定義し、社内育成を促進
DX推進の結果、同社は新事業の創出加速や子育てしながら働きやすい労働環境の整備などを実現しました。また、コロナ禍でも年間7,000社の顧客を獲得し、新事業の加速などにより過去最高売上を3年連続更新するなど、業績面でも高い成果を挙げています。
この事例から、自社独自のDX人材定義による人材育成や、データ一元管理による柔軟な働き方促進などの取り組みが参考になるでしょう。
有限会社ゼムケンサービス(建設業)
有限会社ゼムケンサービスは、福岡県にある女性従業員の割合が多い建設会社です。同社は、女性技術者の人材育成やデジタル化などの仕組みをデジタルサービスにし、全国の中小建設業に広げていくことをビジョンにDX推進を行ってきました。
同社が実施したDX推進の取り組みとしては、主に以下の点が挙げられます。
- 講師を招いて全社員へのDX勉強会を実施。また、DX関連の知識習得のための研修を定期的に実施
- コミュニケションツールのデジタル化やデータのクラウド共有などにより、いつでもどこでも働ける環境を整備
- 大学や北九州市などとパートナーシップを結び、協力してDX推進を行える関係性を構築
ITツールを活用したコミュニケーションの円滑化や柔軟な労働環境整備の結果、同社は同じ社員数で売り上げを4倍にまで拡大しました。その結果、1人あたりの売上高が大手ゼネコン含む業界平均を超え、大幅な生産性向上を実現しています。
この事例から、中小企業でもツールの有効活用やITリテラシー向上、外部との協業などによって、大手企業を含めた業界水準を上回る生産性を実現できることがわかるでしょう。
まとめ
「2025年の崖」問題やコロナ禍での事業継続などを背景に、日本企業にとってDX推進は緊急性の高い課題です。DX化は、社会やビジネスの変革だけでなく、データ管理の最適化やレガシーシステムの刷新によって社内の業務効率化にも寄与します。
DXによる業務効率化を進めていくためには、計画・実行・検証・改善のPDCAサイクルを継続的に回していくことが大切です。また、DXによる業務効率化を成功させるためには、DX人材の育成やDX推進目的の明確化、会社全体でのビジョン共有などがポイントとなります。
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